韃靼の馬 辻原登

韃靼の馬

韃靼の馬

実際にあった(時期は全く別だが)朝鮮通信使メンバーの殺害事件をおりまぜ、国と国とのメンツ、間に入った対馬藩の苦衷、さらにまた間に入る間諜の「二重スパイ」化。文・武・女性とそれぞれの面で主人公に怨みや不快感・不信感を持つ通信使メンバーを排し、鎖国(現在は、専門家の方たちはあまりそう言わないようだが)日本で、こんなに雄大な「一身ニ生」を全うした人物を描いた著者の力量が、まずすごい。第二部の韃靼馬調達の冒険譚に至っては。