死のテレビ実験 クリストフ・ニック+ミシェル・エルチャニノフ死のテレビ実験---人はそこまで服従するのか作者: クリストフニック,ミシェルエルチャニノフ,高野優出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2011/08/20メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (2件) を見る

人は服従しやすい。最も感じ入ったのは、「反抗的な服従者」のくだりである。すなわち、「非常に反抗的な服従者」は、初めから「権威」に立ち向かうのをあきらめている。良心との葛藤のストレスから逃れるために「反抗」しているのであって、それは「笑い」と同じ。笑いながら電撃を加えるのと、同じ心理状態なのだ。あるいは、「エージェント」化すれば葛藤からは免れる。または、「電撃などウソに決まっている」「回答者のレベルが低すぎる」などと自らを「合理化」するか。もちろん、拒否すれば、ストレスから逃れられる。早く決断すれば、心の傷は小さい。しかし、自ら望んで応募したこと、当初の「プロデューサー」の説明に納得したこと、何よりテレビの権威から、なかなか逃れるのは容易ではない。やめるのに、相手のルール内で根拠を見つける(「あなた次第」という言葉を逆手に取る・回答者の状態から、先はないと判断される、など)、観客を味方につけて連帯する、などだ。本書ではそうした人々を「深いところで自分を信じていた」から、「テレビはこうあるべきだ」という呪縛から自由になったのだとしている。人間の本質について、暗い気持にもなってしまいそうだが、服従しなかった人たち(から導かれる生き方・考え方)に希望をつなぎたい、と感じた。