階級都市 橋本健二

階級都市―格差が街を侵食する (ちくま新書)

階級都市―格差が街を侵食する (ちくま新書)

東京の山手と下町の格差は、下町の意味する場所が変わりつつ、山手は郊外に拡大しつつあるが、その高低差がそのまま所得や学歴、そして健康にまで広がっている。そしてジェントリフィケーションという言葉で表現されているが、下町地区に高層マンションができて年収が高い新中間層が流れ込んできて、区ごとの格差は仮に縮んでいたとしても区内での格差が大きく拡大している。都市はさまざまな貌がないと楽しくないし、格差があっては危険であり不幸なことである。第5章の六本木・文京区・練馬と板橋・世田谷・足立区の街歩きは、高低差をじかに感じ、ほんのわずかな距離で「紙芝居のように」展開する風景の落差を、高所得者低所得者も利用する居酒屋の名店に足を止めつつ散策する。データを駆使しつつも足を使った、大変わかりやすい本であり、格差が目に見えている都市に東京をしてはならないという気持ちにさせる。