その日東京駅五時二十五分発 西川美和

その日東京駅五時二十五分発

その日東京駅五時二十五分発

広島出身の少年が東京清瀬の陸軍通信兵としてひと足早く終戦を知り、大阪出身の通信兵と共に、8月15日の始発列車で下っていく。風景・乗客を織り込みながら、訓練を思い出していく。苛烈でもない淡々とした戦争体験。広島の火事場泥棒の姉妹など、ひとつひとつの描写がリアリティーが感じられ、作品を支えている。大上段に振りかぶった戦争体験ばかりが戦争体験ではないのだろう。だって、みんな日常を生きていかなければならないのだから。