中世日本の内と外 村井章介

国境という面積のない線ではなく、一定の広がりを持ったゾーンとそこに住む人々は、双方にとって化外であり、なかだちとなる。「マージナルマン」と、近代国際法の観念が短い歴史しかないこと、一方で朝鮮への差別意識は、中世初期の穢れ感と蔑視に端を発している可能性を指摘。三浦の乱後、朝鮮が対馬との通交規模を縮小したことからかえって対馬からの偽使が増えて情報が対馬経由となり、日本の国情の正確な理解を妨げたという指摘など興味深い。著者の教え子である榎本渉の解説もいい。余計な外交活動はかえって国際紛争に巻き込まれる。元寇時、もし三別抄の依頼に応じていたら、モンゴルに対してははっきりとした敵対行為となり、高麗王朝は日本攻撃に積極的になったかもしれない。「百済復興を旗印に新羅・唐と戦った白村江の戦と同様に、日本の侵略主義として非難されていたことだろう」とは、そういう見方もあるか。