江戸の風評被害 鈴木浩三

江戸の風評被害 (筑摩選書)

江戸の風評被害 (筑摩選書)

情報が不足しているとき、飲食や利害に結びつくとき、市場に反する政策が行われようとしていたり、求める政策を実現させたいという願望があったりしたときに、風評(浮説)は起きる。蕎麦の話は、単なる導入として、水道の話も、政治的な背景が浮説にはある場合もあるということで、著者が最も力を入れているのは、相場と改鋳についてだろう。金・銀・銭や江戸の金遣い・上方の銀遣いのことは知っているつもりだったが、金高銀安とか外国為替市場のようなことが起きていたとは。幕府は市場経済に逆らうのではなく流れに沿うような形で介入するしかなかったのだ。朝鮮通信使の来朝や琉球使節の参府に対する「被下銀」鋳造が改鋳の噂の原因となるか。ところで、火事が「世直し」、地震が「世直り」という表現、皮肉が利いているというか。