臨時軍事費特別会計 鈴木晟

「隠忍自重」「事茲に至り」を口に、唯々諾々と軍人に同調する官僚や政治家たちの責任。著者は論述からすると決して「左」ではなく、中国に敵意すら感じるが、それでも止めるべき事を止めるべき時に行う勇気を持たなかった「良識派」の責任を問うているのだろう。開戦直前でもアメリカへの依存度が高く(ヨーロッパの戦争でかえって高まっていた)、アメリカも不況からの脱却のために日本への経済制裁に慎重だったこと、グルーの評伝でもあったが、日本が対米戦に訴えるはずがないという蔑視があったことなど、本論とは別の部分もなかなか。