戦乱の中の情報伝達 酒井紀美

備中新見庄で、これまでの代官が在地から追われ、領主である東寺に対し在地から直務の代官を下すよう要請があった。地頭や守護方、そして国衙領を支配する細川京兆家などの利害が錯綜する中、あえて火中の栗を拾うようなものだが、おそらく経済的なメリットも感じたのだろう、在地の意気に応える形で東寺は使者を派遣、下役を残し、さらに漸く代官を派遣。しかし三職はじめ在地はなんのかんのと逃れようと。それでも代官が殺害されると在地は決起、相手方を焼き打ち。ところが幕府中枢につてがある相手方の高僧・季瓊真蘂が乗り出してくると東寺の腰は砕ける。徳政に翻弄される在地と京のありさまが、手紙とそれを運ぶ人に焦点をあてて描かれる。