武士道 笠谷和比古

武士道ー 侍社会の文化と倫理

武士道ー 侍社会の文化と倫理

武士道という言葉は、『甲陽軍鑑』に登場し、思想は江戸初期から中期にかけ、儒教的な「士道」とは別に、現実的・帰納的な道徳として、武士だけでなく庶民層にも広まっていった。それはかな書きの文学作品からもうかがうことができる。「死ぬこと」は覚悟の問題であり、そのうえで、忠を貫くために生に執着する。敵討の相手方が逃げ続けて生き延びようとすることは、決して卑怯ではない。なぜなら、討った時点ではその侍は勝者であり勇者なのだ。長所があれば躊躇なく取り込むという武士道が広まっていたこと、武士が指導層にいたことが欧米列強の植民地化を防ぎ、庶民層にまで広まっていたことが、米の先物市場や頼母子などの庶民金融を発達させた、と。