原発事故と放射線のリスク学 中西準子

原発事故と放射線のリスク学

原発事故と放射線のリスク学

「リスク・トレードオフ」という考え方。ひとつのリスクをなくそうとすれば、別のリスクが生じる。ところで、放射線のがんへの影響について、がん細胞が必ずしもがんという病気にならないとしたら、小さいうちに手術することが本当に、健康にとってよいことなのかということは寡聞にして初めて聞く問題提起であった。がんという病気を発症するという前提で、早期発見・早期治療を考えるのが一般的だと思うから。また、放射線の影響は、喫煙など生活習慣によっても変わってくること、経時的に小さくなっていくことなども、新しく知った。除染について、政治家は言いだせないが、非現実的な目標に向かい、仕事を持つ(子どもを持つ)世代が帰ることができない(帰りたくならない)人口の希薄な地域を、膨大な費用をかけて行うことと、すべての資産を補償することの便益の比較についても、指摘している。