東京自叙伝 奥泉光

東京自叙伝

東京自叙伝

上野彰義隊、陸軍参謀、ヤクザ、フィクサー、バブル女子、そしてフリーター。共通しているのは、無責任で流されやすく、なるようになれというところ。特に陸軍参謀の「榊春彦」にその傾向が強い。自分たちが引き起こしておいて、政府や軍上層部、ひいては日本人全体の性向に責任を帰している。集合的な意識など、いろいろ仕掛けはあるけれど、著者は、東京の地霊という表現を使って、日本人(平成になってから拡大したのだそうだ)全般への警告と絶望を表しているのだろうか。
読んだ本死者たちの七日間 余華
死者たちの七日間

死者たちの七日間

2日目の先妻との出会いもよかったが、なんといっても3日目の父との思い出の場面が、すばらしい。走行中の列車から線路に産み落とされた「私」を拾い、自らの結婚も犠牲にして愛情を込めて育て上げた父と同僚夫婦、そしてあきらめずに探し続け、再会を果たした実の両親。4日目以降は、都市の貧しい若者の問題を「鼠妹」で描く。金がなければ墓もない、嬰児の遺体遺棄、臓器売買、強制立ち退きなど、中国の社会問題が、それに伴う死者との語りで浮き彫りにされる。