かぐや姫幻想 小嶋菜温子

かぐや姫幻想―皇権と禁忌

かぐや姫幻想―皇権と禁忌

▽「帝の身体とエロス」。帝が王権をたてに迫ると強気だが、男となると、かぐや姫は優柔不断になる。▽「もたらされた罪」。不老不死と生老病死。天上と地上の対立軸。▽「衛府天皇」。天人討伐軍を率いた「勅使少将」と失敗の顛末とかぐや姫の伝言をもたらす「頭の中将」。当時の衛府と蔵人の史実の反映。▽「きたなき地上と、月を忌むこと」。かぐや姫の形見の衣も手紙も、翁は見ようとしない。月も見ない。▽「鎮魂の擬制」。山稜への祭祀に近い。諸陵頭の調使王が「つきのいはかさ」のモデルか。▽「もえる不死薬」。仙薬を愛好した仁明天皇。仏教的に忌避されていた道教的な不死薬を用いたことの弁明。やがて「草薬」に取り込まれ、受容されてしまう。物語では、王権を背負った帝が不死薬を高い山の頂で燃やし、天に返すことで排除する。