「神道」の虚像と実像 井上寛司

「神道」の虚像と実像 (講談社現代新書)

「神道」の虚像と実像 (講談社現代新書)

神道は、仏教伝来にあわせて仏教に対峙するものとして律令で「つくられた」もの。性格の異なる二系統の「神道」があり、中世は①神社祭神としての天皇や神話上の神々と思想的解釈、②儀礼の体系(神祇道)で①が基本。近世の①は、中世の①と②を結合した教義と儀礼体系(吉田神道)で、②は、天皇神話の思想的解釈に基づく国家統治の理念=「神の道」。②が優勢となり①を組み込んでいく。近代は、①皇祖神アマテラスと天皇による国家統治の理念と儀礼体系=「国家の祭祀」、②神社祭祀や神祇信仰で①を基本とする。中世の①・近世の②・近代の①の系列(a)は、民衆統治のための政治支配思想であり、中世②・近世①・近代②の系列(b)は、神社祭祀や神祇信仰そのもの。このふたつの系統を混同させたのが柳田國男であったと。しかし、系列(b)は、仏教や陰陽道などと混在して存在してきたのであり、古来の宗教とは、神祇道だけを切り離せるものではなかったのだ。