下中彌三郎 中島岳志

ユートピア渇望と貧苦の経験からくる平等実現を性急に求める、という一本の柱から、揶揄された「遊動円木」のように、左右両極端に揺れ動く思想。軍事費に慎重な高橋財政を罵倒したのに、非武装中立を主張する。一方、平和憲法は神ながらの体現として連続化される。世界連邦は軍事を伴わない八紘一宇。女性賛美は、俗事=政治・学問・社会活動にふさわしくないとの女性蔑視の裏表。著者は下中の人生からそうした流れを読み取ったのだ。