言論統制 佐藤卓己

情報官として、言論統制に辣腕をふるった鈴木庫三が実は貧窮から超人的な努力で倫理や哲学の大学教官なみの教養を積み重ねた男であったこと、そのことを編集者達は知らなかったのではないか、とのこと。ハビトゥスの差から鈴木は編集者達を弱者とは思わなかったこと。編集者達は戦争協力を隠す意味でも鈴木に押しつけたこと(鈴木が情報局にいなかったときの事件まで)。鈴木のイメージも単純な悪役にまとめられたこと。国分一太郎などひどい話だと思う。新書としては大部だが、なかなかの本だ。

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)