1688年 バロックの世界史像 ジョン・ウィルズ

壮大な本だ。▽1688年前後の世界各地の動きを平行して描いているから、各国史レベルと異なる関連性がわかる。また、関連がなかったり乏しい日本の文化的動き(西鶴芭蕉)が同時期のヨーロッパ(ニュートンやロック、アフラ・ベーン等)やアメリカ大陸(ソル・ファナ等)の動きと比較できる。▽奴隷は、アフリカでも送り出した現地の勢力があったこと(ただ、同胞という意識がなければさらった者を売り飛ばすのは、安寿と厨子王でも明らかで、これだけ組織的に行われたところに、アメリカ大陸の銀やヨーロッパの航海・貿易の背景を見るべきだろう)。▽名誉革命について、結果として出された「権利章典」が人権史上名高いこともあって、よいことづくめに感じたが、実は、議会が王を追い出してオランダから迎えたのではなく、フランスとの対抗上のオランダの侵攻があったことは初めて知った。カトリックのジェームズ2世は、宗教的寛容令を出そうとして(実際はカトリック優位を狙ったものなのだろうが)、クウェーカーのウィリアム・ペンなど少数派の支持を得たこと=つまり、同じカトリックでもナントの勅令を廃止したルイ14世とは別だった=が、フランスから度々攻め込まれていたオランダと国教会が結びついたこと。

1688年―バロックの世界史像

1688年―バロックの世界史像