沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻一,二,三,四 夢枕獏
なんとまあ、という感想である。いかにも怪しげな事件から始まり、日本人にも馴染みの深い玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋、そしてその背景である白楽天。白楽天と空海が同じ時代の人でたまたま長安で出会ったら、という発想が素晴らしい。空海=晴明・逸勢=博雅というのが重なるのが、少し鼻につくが、呪や密教、拝火教などの予備知識を自然に表現するには欠かせない役回りであろう。それにしても、猫の妖物の話など本当におもしろかった。参考文献に挙げている明代の小説であろうか。10月に読んだ『酒呑童子の誕生』でも、地方官僚が妻を妖物に寝取られるという中国小説が酒呑童子伝説の源流の一つではないかとして紹介されていたのを思い出した。
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