穢と大祓 山本幸司

穢の伝染について、『延喜式』の規定では、「甲処に穢有り、乙その処に入る(著座をいう)。乙および同処の人皆穢たり。丙、乙処に入る。ただ丙一身穢たり。・・丁、丙処に入る。穢たらず。」補足『新儀式』「死骸有る間、その処に入る者甲たり。骸を収むる後、至りて触るる者乙たり。甲人乙処に到り、甲と同座の者乙たり。甲人去る後着座の者丙人たり」。▼穢を秩序との関係で捉えているのがおもしろい。▽死は残された成員間の社会関係の再調整が必要で、出産も。六畜の死も家畜だから。失火は人間の生活の場である家を破壊する。▽従って、ただ穢れた場所に行っても座ったり共同飲食すると穢になるのは、社会的な関係が近くなるから。▽家の中で死ぬことができるのは主人やその家族で、社会的な地位と相当する。▼穢れる空間は閉鎖空間で、道や荒野、河原は穢れない。穢物と直接接触して穢れることはあるが。▽垣根は外からの穢を防ぐが内部に発生したり外部から侵入したら逆効果で空間全体が穢となる。死者が出そうだと新しく垣根をしても門も別に必要。▽流れる水は穢れない。川に死体があっても川は穢れない。井戸はだめ。▼穢は柔構造。当初30日で伝染するとされていた失火の穢が現実の消火活動の妨げになることから7日と短く伝染しないようになった。▼罪は潜在的にあるもので、災害が起きてから遡及的に原因追求して見つかる。大祓は、中祀以上の祭りが中止になったとき、その罪を祓うときや年2回定期的に行ったりと、特定に穢に対応するとは限らない。

穢と大祓 (平凡社選書)

穢と大祓 (平凡社選書)