対岸の彼女 角田光代

対岸の彼女

対岸の彼女

「私たちはなんのために歳を重ねるのだろう」。一人になるのが怖くてつるみ、自分が仲間外れになるのが怖くて誰かを犠牲にする、その繰り返し。そのなかで、小夜子は世界を変えようと働きに出る。勤め先の人間関係が嫌で結婚を期に退職したのと、まったく同じ理由で、うまくいくはずがないことが容易に想像できるようになっている。そして、小夜子の目に映る葵は、実は小夜子と全く同じように、それ以上に人間関係に傷ついた過去を持つ女性だった。そして葵の目に、みんなから大事にされてきたんだろうと思われたナナコも。現在の場面に全く登場しないナナコの、葵とナナコを知らない小夜子との間に示す圧倒的な存在感。