東電OL殺人事件 佐野眞一

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

堕落、ということがテーマ。渡邊泰子だけでなく、同居の同国人から部屋代をピンはねし、キセルで小金を稼ぐゴビンダについても。そして彼女は、中途半端に堕落した現代の日本をあざ笑うかのように著者の前に深い闇を見せつけ、周辺を巻き込む(という論の展開だが、周辺を巻き込むのは、事件の結果であり、どんな人にもそれなりの人生があるのであり、たまたま彼女を目撃し法廷で証言したからといって、負のオーラ的扱いは、どうか)。全体として、やや思い入れに過ぎる点はあるかもしれないが、日本の司法制度や、ネパールに託し口先だけで実際に行動せず自らを汚そうとしない(匿名報道支持の)世の「人権派」を痛烈に批判している。