懐郷 熊谷達也

懐郷

懐郷

『かたみ歌』と比較されるが、確かに『かたみ歌』が東京下町を扱っているのに対し、地方を舞台に少し不思議な奇跡を含んだ短編集。ただ、奇跡系では、「磯笛の島」はややストレート過ぎて、「お狐さま」くらい跳んでいる方がいい。なかでは、「鈍行列車の女」は、都会に憬れる心象を暖かく認め、「鈍色の卵たち」は、女性教師と教え子の心情が、しみじみといい。