刀狩り 藤木久志

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

刀狩り―武器を封印した民衆 (岩波新書 新赤版 (965))

副題の「武器を封印した民衆」というところに主張は尽くされよう。目からウロコの本である。古来、農民でも商工民でも一人前の身分標識として刀が重視されたことを強調した上で、▼秀吉の刀狩りは身分標識である帯刀の規制に重点が置かれ、鉄砲や鑓には余り関心が払われていない。喧嘩停止令(成文法は見つかっていないようだが)が重要で、自力での村同士の合戦という戦国の村の習いは禁止され、村には武器は相当量残されたが使われなくなった、鉄砲も相当量あった(鳥獣対策)が一揆でも使わず、鎮圧側も幕末まで自制した。▼明治の廃刀令も、帯刀の禁止であって袋に入れて持ち運ぶのは問題なかった。▼いわゆるマッカーサーの刀狩りで武器はほぼなくなった、皮膚感覚として狩られたわけだが、それでも美術刀として相当量の刀が民間にはある。民衆は秀吉によって丸腰にされたのではなく自立した民衆として武器封印したのだ、という論であり、日本が特殊だという感覚を、12世紀ヨーロッパでしばしば出された平和令が刀狩り令と酷似している点を冒頭と最後に紹介している。