箪笥のなか 長野まゆみ

箪笥のなか

箪笥のなか

連係して捉えてはいけないのかもしれないけど、熊谷達也『懐郷』が地域の不思議、朱川湊人『花まんま』が町内の不思議だとすると、この作品は、家庭内の不思議、というよりも、家具の不思議か。付喪神からの連想だろう。中途半端なかな遣いも意識しているのかも。で、今一つ。理由を考えるに、余りに身近で日常の場所である家の中での怪異は、やはり、そぐわないのだ。それでか、物事に動じない義妹や大家など、登場人物としてはよく練られてはいるが。このところ読む女性作家の作品はヒットが多かっただけに、残念。今回のは、振り逃げって感じかな。