新リア王 上・下 高村薫

新リア王 上

新リア王 上

新リア王 下

新リア王 下

四十日抗争や安竹など昭和末期の政争と、高度経済成長からオイルショックへのなか、原子力船や放射性廃棄物、新幹線に揺れる青森県政を絡ませ、長男の裏切りにより崩壊する王国を、王と婚外子の対話を通して描き出す。大作であるのは確か。シェークスピアドストエフスキー埴谷雄高などを強く意識した構成か。姪婿で資金管理担当秘書の英世と選挙区担当秘書の竹岡が秀逸で、特に竹岡は、ドストエフスキーの小説(例えば『悪霊』とか)に出てきそうな底知れなさがある。ただ、いかに禅僧の彰之を表現するためとはいえ、榮にまで禅語の羅列をさせるのは、作者の広大な知識で読者を押さえ込まんとする戦術と見え、鼻につくかも。北沢署の合田、というのは、合田雄一郎だろうけど、このあと秋道など絡めつつ一連の合田刑事シリーズに融合していくのかしらん。