東京奇譚集 村上春樹

東京奇譚集

東京奇譚集

名人芸の短編集、と言いたいところだが、読み進んでいくうちに調味料過多が鼻に付いてくる、という感を否めない。なぜだろう。「偶然の旅人」は、最初のモノローグが邪魔にも感じるがないとラストが締まらないし、「ハナレイ・ベイ」は、そうか、という感じ。「どこであれそれが見つかりそうな場所で」がおそらく一番で、「日々移動する腎臓のかたちをした石」は、なにかの悪ふざけか。「品川猿」は、まあ羊だと思って(ただ、これはそれなりに読ませた)。東郷隆の『明治通り沿い奇譚』の方が、好みではある。