「中心-周縁」史観からはこぼれてしまいがちな地域を、日之本地域(十三湊といった北奥や北海道など)、
琉球王国、
対馬や
済州島や博多そして
倭寇という三部構成で記述している。やはり、「第二部
琉球の形成と環シナ海世界」「第三部 海域世界の交流と境界人」がおもしろい。
琉球王国の辞令書から
首里で地域の事情を把握していたという支配の状況や、
対馬が朝鮮側から見て自分たちの領土(少なくともかつては)という意識が強く、
応永の外寇のあとに派遣された
使節にたいして日本側も特に抵抗感を表明した様子がない(宗氏の主筋としての少弐氏の抗議はあったがいわば「私権」的なものか)。陸の支配権は守護として
室町幕府に、「海に関する権力の源泉は受図書人、すなわち朝鮮国王によって権威づけられていた」。日本の
南北朝や中国の元から明への交代、
明王朝の衰退など、陸の権力との関係で海の勢力の動きも変わる。もちろん、サハリン・
アイヌと元との戦争や北の湊と中国などとの交易など「第一部 北の周縁、列島東北部の興起」も興味深い。