わが人生の時の時 石原慎太郎

わが人生の時の時 (新潮文庫)

わが人生の時の時 (新潮文庫)

死と不思議に関する短編集。創作もあるのかもしれないが、形式はエッセーである。海という、かつて全ての生物のふるさとだったかもしれないが、人間は生身では棲めないところ。そこを舞台にした作品が多い。「落雷」の、全てのものが帯電して光っている様子、「落水」の他人の死によって改めて確かめられた自らの生の悦び。政治家・石原慎太郎は、ほとんど評価していないが(わずかに環境問題くらいか。今回の耐震強度偽装問題での対応も正論で好感は持てる)、あの迫力はこうしたいわば「死線」を何度もくぐってきたところから生まれるのだろうか。