砂漠 伊坂幸太郎

砂漠

砂漠

なんてことは、まるでない。逆説的に物語を展開させるキーワード。ラストの「はずだ」がさびしく切ないが、「僕」は覚悟しているのだ。オアシスを懐かしみつつ砂漠へ出て行く自分たちを。
伊坂作品の中で、というだけでなく青春小説というジャンルの中でも極めて高い水準。それでいて、タイトルはとっつきにくいし超能力は出てくるしで、一般的というか少なくともそのままテレビドラマなどにはならないだろう。そういうことも含め、作者は、どうなんだ、と自負を持って読者に提示してきている、そんな気がした。『魔王』は、はっきり言ってどうしようもない作品だと思うが(世間の評価は違うらしいが.ただ直木賞は受賞しなかった。当然。もっといい伊坂作品があるはずだし、今後書いてくるはず)、これはいい。伊坂作品を読んでいつも感じることは、「悪意」「毒」の処理の仕方なのだが、この作品は実にうまく溶け込ませている。また、西嶋というキャラは、これまでの作品にはなかったのでは?鳥井や南ちゃんや東堂やそれに莞爾のような人物はいたけど。ただ、古賀さんは中途半端でよくない。これからの伊坂作品に新しいキャラクターが加わったことを喜びたいな。