となり町戦争 三崎亜記

となり町戦争

となり町戦争

新人の第1作としては、こんなものじゃないの、という感想であり、それ以上でも以下でもない。
直木賞候補になった、というのは信じられない。役所的事務手続き的に流されていくうちに戦争状態に巻き込まれる、ということを表現しようというのだろうけど、第1章から第2章までは、あまりに役所用語や日常生活のディテールにこだわりすぎて冗長。第3章からそこそこ盛り上がり始めて、第4章が一番の見せ所だが、それも当初の無自覚的に流される、というコンセプトを意識しすぎなのか、今ひとつ。それでも、クリーンセンターのくだりでは、それなりの緊迫感がある。とはいえ、ご都合主義的展開という批判は免れないだろう。第3章の弟は、物語においてなんの意味も与えていない。佐々木さんの存在は、物語のテーマとしては重要なはずだが、全くそんな効果を挙げていない。そもそも条例で通ったとか国や県からの予算とか、現実感を持たせようという小細工が、かえって非現実。警察だって通り魔として捜査するというのは、戦争下のプロの仕事としてはあまりにも拙劣。終章は最悪。