タクシードライバーは眠れない

録画しておいたNHKドラマ「かあちゃんが来た」を見る。展開などあまりにも安易で、ドラマとしては極めて底が浅い。ただ、東北に住んでいたことがあるが、若い嫁といえば外国出身者ばかりの山形県の山村(ロケ地はスイカの名産地尾花沢と、最上川舟形町)の状況と文化摩擦は、よく描けていたのではないか。実際、地方農村部ほど国際化(それも文化交流とかビジネスとかいった上辺の話ではなく)が進んでいる(進んでいる、という表現も変かな)という実感を持ったものだ。
やはり録画しておいたNHKスペシャル「タクシードライバーは眠れない」を見た。タクシーはどちらかというと金持ちが乗るもの(ビジネス利用、時間を節約したい、深夜まで酒を飲む)であろうから、ひょっとしたらタクシー車内は日本でもっとも階層格差の大きな空間なのかもしれない(病院の行き帰りなど、弱者の乗り物としての側面もあるが)。
昔ながらのタクシー会社のドライバー、最初に長距離で安売りを始めた最大手、初乗り500円と持ち帰りで急成長した新興、持ち帰りを批判・告発した業界労組役員など、ていねいに取材し、規制緩和の影をわかりやすく伝えている。持ち帰りを認めるよう国土交通省まで要請に行く新興会社の労組委員長、そして告発した労組役員の勤務先は最大手、というのは、えっという感じ。その最大手は自ら500円タクシーに乗り出し、業界の淘汰を進めようとする。ホリエモンではないけれど、新興勢力が既成勢力に食い込んでいこうとするとき、どうしても法律違反またはすれすれのような事態が起きてくるのかもしれない。搾取と安全軽視は絶対にあってはならないが、ただ規制するだけでは既存の大手を保護することにつながることになりかねない。