百万回の永訣 柳原和子

百万回の永訣―がん再発日記

百万回の永訣―がん再発日記

ラストの、キャンサーフリーとはがんが無いという言葉ではなく、がんからの自由、という部分、この闘病記録のエッセンスだろう。医療を批判していた立場から、その人脈を活かしての医者探しと戸惑い。親しい医師からの「もうこれ以上のドクターショッピングはいい加減やめろよ」という言葉。本当に納得する治療を受けたいと思いつつ、真摯に寄せられるさまざまな意見のなかで、結局、治療法として納得したわけでもないのに、医師の姿勢を受け入れて手術を選んでしまったことライターとして、カンボジア筋ジストロフィー患者の取材を通じてずっとひけ目に感じていた傍観者から、がんになって当事者としての立ち位置を得た、という受け止め方をしていたこと、代替医療オステオパシー」の治療師の言動。生きようとするところに死への恐怖が生まれる。揺れ動く著者の心と行動、そのもたらす出来事や日常が、親しい友人(同志、と言うべきか)のがん死と自らの再発、そして信頼できる(治療法として)医師との出会いと治癒(でいいんだろう)という流れの中で克明に描かれている。