沖で待つ 絲山秋子

沖で待つ

沖で待つ

同期というのは、一種独特の関係で、それを男女にすることで一層、友だちでも恋人でももちろん単なる同僚でもない面が強く打ち出される。「仕事のことだったらそいつのために何だってしてやる」という一節は、ちょっと大げさかもしれないが、少なくともそういう意識・軽い義務感のようなものが存在するのかもしれないし、現実、相当助かっているのかも。HDDを壊すという約束を実行しているシーンは、張りつめた雰囲気の中でのディテールの描写が抑制された悲しみをよく伝えてくる。人に言えない趣味から語り手がかなり危険な精神状況にあることが推察され、冒頭からの幽霊との会話、というところに収まっていくのだろう。しみじみとした中に語り手の今後への危うさを感じさせる。佳作。収録された「勤労感謝の日」は駄作。