静かなドンⅠ、Ⅱ、Ⅲ ショーロホフ 河出書房

前に読んでから4年7ヶ月経っている。ほとんどおぼえていなかったため、2回目であるにもかかわらずグリゴーリーのくるくる変わる立ち位置とその原因となった事件が今ひとつ整理されぬまま終わってしまった。①まず勇敢な帝政ロシア軍兵士だったグリゴーリーが負傷してモスクワに入院中、同室患者の感化で赤化、革命を機に赤軍に。②やはり負傷した際に見たポドチョールコフによる白軍チェルネツホフへのリンチで赤軍に疑問を感じ、帰省中、なんとなく反乱軍に。③戦線崩壊後、故郷に戻るが、進駐してきた赤兵からかつて将校だったことを理由に狙われ、逃走して反乱軍に。大活躍して師団を指揮する。④反乱が失敗し、白軍も壊滅後、再び赤軍に参加するがまもなく故郷に帰され、妹婿のミシカと対立。⑤逃亡中に徒党に加わるが匪団で戦闘力もなく、抜ける。アクシーニヤを連れ出し南方に新天地を求めるが、赤軍の銃弾で彼女は死亡、すべてを失った彼は帰郷し、息子を抱いて家の門に立つ、といったところか。敵役として当初出てきたリストニーツキーやミチカはいつのまにか消えてしまったし、ペトロやグリシャカを躊躇なく殺すミシカにドゥニャーシカがどうして惹かれるのかとか、ミシカやシュトックマンの非情さの来るゆえんとか、いろいろと消化不良ではある。戦闘シーンは、左利きを利用した剣術など、具体的。自然描写も人間をやわらかく受け入れるというよりは、厳しく対峙しているようで、そこに生きるコサックの激しやすく財産に固執する気性を表現しているかのようだ。