隠蔽捜査 今野敏

隠蔽捜査

隠蔽捜査

冒頭の谷岡に対するシーンなど、嫌なやつそのものかと思わせて、美紀の「結婚」をめぐる冴子とのやりとりが秀逸で、主人公・竜崎への関心が一気にかき立てられる。こんな高級官僚がいるわけがない、と思いつつも、本来の意味のエリートが変人ぶりを(それなりに筋が通りある程度ふつうに動くから高潔な志を理解されにくく嫌われ友達もいない)貫きつつ、結果として組織をぎりぎりのところで救う。殺人事件が本庁が関わる話ではないという若手官僚への小さな反発や、出世=権限の広がり=やりたいことができるという捉え方でのこだわり、東大へ行け=最高の可能性を追求せよ。なんだか襟を正したくなる。全てが正論で、邦彦の事件にも揺れ動きながらも筋を通し、家族の支持を受ける。ラストもいい。続編を考えているとしたら、このキャラを維持して物語を展開していくのは大変とは思うが、今野敏なら期待できそうだ。