評伝ではこれまで
利光三津夫『二流人物論』(日経新書)が最高傑作で、藤沢道郎『物語イタリアの歴史』が次ぐ、と思っていたが、どうしてこれもなかなかだ。
今谷明(書いていないが、そうだろう、堺幕府といい、戦国期の
天皇といい)に対する強い反発が窺えるのもおもしろい。大丈夫、『中世奇人列伝』などより、ずっと上だ。顕密体制への反発、
本能寺の変への素直な理解。
統治権、という概念。もちろん、言いたいことを言うために、あえて人物を設定し、結局その人物についてはさほど語られない(
九条道家や
細川政元)うらみはあるが、筆者の視点がとても好感が持てるので。また『二流人物論』を読みたくなってしまった。他人に貸して返すように求めたら「膨大な蔵書にまぎれてしまって探せない」、と言われたんだっけ。