現代立憲主義の制度構想 高橋和之

現代立憲主義の制度構想

現代立憲主義の制度構想

現代行政国家を憲法上、いかに統制するか、という観点から非常に興味深い論点を提示している。高橋和之にかかると、参議院で否決されて衆議院を解散する、という小泉の暴挙が実は、国民によるコントロールという意味では理にかなったものとして提示される。この点で明らかなように、おそらくは発表当時は目新しかった問題提起が本として出版された今、すでに現実が乗り越えてしまっているという部分もあるのだが、だからこそ「国民内閣制」という概念に説得力を感じて読むことができた。▼選挙を実現可能な政治プログラムの選択(非媒介民主制)なのか、国民の政治意識の正確な縮図をつくる(媒介民主制)のか、と迫り、国民が内閣の責任を追及することができる仕組みはどちらなのか、と、いくつかの論文がたたみかけるような迫力を持つ。▼そして、立法と行政がそれぞれ憲法の執行・法律の執行、という観点で整理する行政権の分析、▼司法権を、公権力が法に従って行使されることを監視し確保する役割と、国民に対し法的争いを解決し救済を与えるという役務提供の役割と、つまり横と縦に分けて論じている。▼最後の憲法変遷論についての論文は難解だが、「違憲の実例は、憲法改正がなされない限り違憲であり続ける」という考えに尽きるだろう。事実としての憲法変遷を認めるとしても、解釈論上、認める実益はない、ということなのだ。無益なことを論じるから難解なのだ。