国家は僕らをまもらない 田村理

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

国家は僕らをまもらない―愛と自由の憲法論 (朝日新書 39)

著者とは会って話したことがある。それはともかく。趣旨は、国家と距離を適正に保たなければならない、自立しなければならない、ということであろう。憲法の保障する人権とは公権力と対峙するものであり、私人間の人権侵害の解決を公権力に求めようとする我々の姿勢(著者の言う「クルリン」)が立憲主義を根付かせない。多数決は、何かをまとめなければならない時にやむなく導入されるもので、害のない少数派は寛容に認めなければならない。そして平和主義については、戦力を放棄しながら自衛権を認める護憲派憲法学を批判し、「殺される覚悟」をうたう。著者の態度で好感が持てるのは、立憲主義を骨抜きにしない方法として、憲法改正による授権と制限をきちんと「あり得る選択」と評価しているところである。そのうえでの「平和憲法を守る覚悟」の表明であるからだ。