臍の緒は妙薬 河野多恵子

臍の緒は妙薬

臍の緒は妙薬

表題作は、臍の緒について尋ねるだけでも、さまざまな気遣いが必要で、臍の緒を保存している、ということ自体が、一定の価値観・状態を意味することを表し、もう相当の「いい年」だろうに、だからこそ湧き上がる生への好奇心(執着、と最初思ったが、どうも違うようだ)、親を送るのとはまた別の寂しさのある兄弟の死(これも自らの死が近くにあることを実感させられるという意味で、一種、利己的である)と、老いて後の死生観がよく現れている。ほかは、「星辰」がうまいとは思ったが、「魔」などどこがいいのやら、「月光」に至っては意味不明、という感想であった、頂点と呼ばれる人の短編集に対して。