オクシタニア 佐藤賢一

オクシタニア

オクシタニア

なんという感動か。関西弁を使って標準語のの北部と区別した、という触れ込みに読まず嫌いでいたが、読んでみて本当によかった。その意味で箒木蓬生の意味はあったと言えるかも。「聖地」のラストは生の意味を高らかにうたいあげている。プロローグの場面に戻るエピローグも興奮を静かにクールダウンさせていく。副主人公のトロサ伯(人と神の対峙、という意味では事実上主人公とさえ言える)の心の動きも、偶然を神意ととらえ、勇猛な十字軍戦士と化す騎士シモンも、信仰という化け物と格闘する人間の姿を描きつくしている。ところで、東北人・佐藤さんの関西弁ははたして適切だったか。関西ネイティブの人に不自然に感じられたとしたら、それはうまくないけれど。