傷 深谷忠記

傷

脅迫の転送とは、よく考えたものだ。迫力ある筆致で一気に読ませる。復讐の動機としても十分だし、殺人に至る経緯も、さほど不自然でない。エゴイストと自認する女性弁護士を登場させておくことで、「指揮者」のエゴぶりがいっそう際立っている。それにしても、いったん疑われると男の立場というのは極めて弱い。