楽園 上・下 宮部みゆき

楽園〈上〉

楽園〈上〉

楽園 下

楽園 下

超能力を持つ少年の存在が前提になっているわけで、その部分を飲み込むことが出来るかどうかが、評価に大きくかかわってくるだろう。今回の設定では子どもですでに事故死しているから滋子が謎解きをしてやらなければならなかったわけだが、成人だったら、どんな難事件も即解決、となってしまいかねず、反則だからだ。で、飲み込んで読んでいけば、すばらしい作品だ。小学校の、児童相談所の「先生」たちの偽善ぶり、「あおぞら会」の暗部、「断章」として挿入される小学生の独白。見事というしかない。そして意外な、しかし暖かいラストには涙が出た。