僕はパパを殺すことに決めた 草薙厚子

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

調書の漏洩、強制捜査で話題の本。ほとんど供述調書で成り立っている本であり、地検として放置できなかったことはよくわかる。ただ、調書が明らかになったことで、少年の父親の病的な暴力具合がよくわかり、事件の背景への理解も深まったようには思う。広汎性発達障害という鑑定とそれを全面的に支持すると言わんばかりの著者の姿勢にはやや疑問もあるが、実は一般にごくありふれた障害で、接し方を誤ると取り返しのつかない悲劇を招くこともある、という警鐘と受け止めようか。このノンフィクションの出来は、供述調書そのものを掲載したことでありそれ以上でも以下でもない。そして一般論として少年の供述調書の流出が許されない以上、このノンフィクションの意義とは別に、検察の強制捜査は当然であろう。