露探 奥武則

露探―日露戦争期のメディアと国民意識

露探―日露戦争期のメディアと国民意識

ナショナリズムがその底流にある恐露感情と結びつき、愛国心・軍神の対比としての「露探」を生んだ。一応の事実らしきものが認められる利敵行為を背景に、新聞が煽り、「向こう三軒両隣」が主体となって露探叩きが広がる。露探の話は決して過去の話ではない、この人間世界を住みやすくしていかなければならない、漱石の『草枕』を引用しての著者の決意には全面的に賛成である。