サムライとヤクザ 氏家幹人

「ヤクザ」に対して「武士」の持つ劣等感が欧米コンプレックスから来る武士道礼賛の風潮を背景に、日本人の心象にヤクザを肯定的にみなす部分があるということだろうか。本来戦うのが仕事の武士がなるべく揉め事を避け続ける(それでも面目を立てようと『武備目睫』のような非情時マニュアルもつくられる)うちに、幕末の騒然とした状況の中でも公文書にふざけた内容を書く(軽薄さを洗練さと勘違い)ほどに堕落する一方で、武威をアウトソーシングされた町の荒くれたち。おもしろい。