愚者と愚者 上・下 打海文三

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱

先ごろ亡くなった打海文三の比較的最近の作品。『裸者と裸者』の続編。結局内戦は終わることなく、この壮大な物語は中断してしまった。極限状況で噴出した性的マイノリティーや外国人に対する迫害と決起。「上」は孤児部隊の司令官・海人の、「下」は少女マフィアのボス・椿子の視点から描く。戦闘シーンの迫力と、繰り返される対立と和解。「上」での常陸軍孤児部隊の俊哉の裏切りや「下」での「黒い旅団」の多村の性的な背景などがクライマックスか。なじみのある地名が多く、地図が頭の中で違和感なく浮かぶのが心地よい。作者の住まい・茨城県北部での戦闘がていねいに描写されている。