蘇る中世の英雄たち 関幸彦

中世の英雄たちが、江戸時代にどのような大衆心理と時代状況の中で復活し、受容され、近代につながっていったかを、「敗者の復活」「武威の来歴」「異域の射程」をキーワードに描く。それぞれ「道真と将門」「田村麻呂と頼光」「為朝と義経」が配される。▽「武威の来歴」での「武威の磁場」ということばで、征伐史観と霊的な威力、という二つの面を指摘したことで、平家を倒した後の頼朝が奥州征伐を強行した意義、すなわち平忠常の乱を平定した頼信が伝説にならなかったことにも射程が広がる。▽「異域の射程」での、馬琴の『椿説弓張月』が異国船との緊張をはらんだ時代だったこと、近代になって主張された義経ジンギスカン伝説から満蒙への視線が読みとめることなどは、とても興味深い。