ベーコン 井上荒野

ベーコン

ベーコン

食べ物を通して恋愛や家族模様を語る。一晩は、「煮こごり」か。女たちを週一回訪ねる男の話。女たちに全く素性を詮索させないとは、よほど自然な立ち居振る舞いだったのだろう。「クリスマスのミートパイ」。妻のさりげない、しかし深い愛情がうれしい。「ほうとう」。母親との思い出の料理を交際中の男にいつか食べさせたい。しかし、その男は、妻との間に子が出来、彼女の聞いたことのないおなかの中の子に聞かせた。その屈託の中で、作ることになる。「煮こごり」よりいいかもしれない。