平清盛 福原の夢 高橋昌明

平清盛 福原の夢 (講談社選書メチエ)

平清盛 福原の夢 (講談社選書メチエ)

年末に良い本にいきあった。▽源氏物語の世界になぞらえている、という視点は、管見では、この作が初見だけに(専門家の間では常識だったのかもしれないが)、知的興奮である。清盛を道長光源氏となぞらえるか、福原に退隠し娘を中宮に差し出したことから、孫娘が中宮となった明石入道と貶視する(後白河上皇)かはともかく。▽承安の宋からの方物は、明州刺史(知明州事。実際は兼務している「沿海制置使」)からだが、宋代は高度に中央集権的であり、「一地方官のスタンドプレーにはとどまらない」。また、「昔から中国は、自ら先だって周辺弱小国に使を送ったりはしない」。孝宗皇帝の同母兄・趙伯圭であり、清盛の貿易推進の要請に対し、海賊を除くことを求めたのであり、清盛が剣と鎧を返礼の贈り物にしたのは同意のサインと解し得る、と。また、中国からの銭・日本からの木材がバラストの役割を果たした、というのも興味深い。