十五万両の代償 佐藤雅美

十五万両の代償  十一代将軍家斉の生涯

十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯

佞人という扱いになっている水野忠成が事実上の主人公か。思いやりのあり、家格からお役に付ける人が限られほとんどが馬鹿だからと、恨みのある人物でも公正に扱う。既往は賄賂はとるが。間に挟まれるエピソードが少しうるさいが、江戸時代特に文化文政期の雰囲気を知ることにもつながる。家斉にも忠成にも特に関係のない近藤重蔵の話が入るのは、ひょっとしてヒーローとしてシリーズで描いている逢坂剛への牽制か。矢部定謙の粥に灯明油を混ぜたことが、「直情径行で気性は激しいが、さっぱりした硬骨漢」という印象を周りに与えたが実は、「さっぱりした硬骨漢ではなかったが、直情径行で気性は激しかった」というくだり、おもしろい。