刺激に満ちた本。具体的な「悪性のリアリ
ティー」にこだわる現場派と、日本の司法制度を変革していこうという法務官僚との対立。それはKSD事件での村上逮捕の陰にあった
自民党党費立替や
日歯連事件での村岡逮捕の陰にあった
国民政治協会を使った「
マネーロンダリング」など立件されなかった事件をめぐる対立となる。こうした立件を抑える一方で、
UFJの検査妨害の立件など、市場にこだわる。ルール整備後の事後的な司法、という市場検察の整備に向けた「だんご3兄弟」の志向は
公取委・証券監視委を、時に従属的なパートナーに展開される。石油ヤミ
カルテル事件以来、
公取委からの告発は受けない、という従来の検察の姿勢からは180度の方針転換だ。著者は圧倒的な取材力を背景にした事実をもとにこうした流れを丹念に描いているが、白眉と言えるのが「リーニエンシー」という、日本の
法曹界ではタブーとなっていた司法取引の導入についてである。「
人質司法」という言葉に象徴されるように隠微な形ですでに行われているものを制度化することが、現在の特捜検察の行き詰まりの打開にもつながると主張している。